月刊ホームページ9月号(2002年)
今回の月刊ホームページでは我々の講座で行っている風力発電に関する研究を紹介します.まだ研究中でありますが,今までに得られた結果をまとめました.なお,以下の結果は日本機械学会東北支部第37期総会講演会で報告したものです.
近年環境問題への対処等から,太陽エネルギーや風力エネルギーなどの環境に優しく,地球に賦存する新エネルギーが積極的に導入されている.現在大型の風力発電装置が青森県に限っても数ヶ所設置されているが,大きな風力発電装置では,景観や騒音などの問題から設置場所が限られるので,今後分散型の小型風力発電装置の需要が見込まれる.
本研究の目的は,津軽地方の強い冬季季節風を利用して風力発電を行い,そのエネルギーを融雪に利用するシステムの構築にある.そこでまず,気象観測装置および風力発電システムをフィールドに設置し,津軽地方の風況ならびに風力発電能力を調査したので報告する.
本研究では風力発電装置,気象観測装置の2つの装置を青森県金木町にある弘前大学農学生命科学部付属農場に設置し,観測を行っている.その概略をFig.1に示す.風力発電機からの電力は充電制御装置を介してバッテリーに充電される.その際発電量は10分毎にデータレコーダに記録される.バッテリーが満充電後,余分な電力は放電コントローラーによりライトを通じて放電される.気象観測装置は地上より2.5mの高さに設置してあり,風速,風向,気温,湿度などを調べて,10分毎にデータレコーダに記録する.
風力発電装置のスペックをTable 1に示す.システムは英国プルーベン社製で,発電機は5.5mの高さに設置してある.ロータ径は2.55mで,定格(10m/s)で600Wの出力を発生する.またシステムは,ロータブレードが発電機の風下側にあるダウンウィンド型で,強風時にブレードが風下側に倒れて受風面積を減らすコーニング型の機構を有している.

Fig.1 Wind Power Generation System
Table 1 Specification of Wind Power Generator
|
Rated
Power |
600W |
|
Rated
Wind Speed |
10m/s |
|
Hub
Height |
5.5m |
|
Start up
Wind Speed |
2.5m/s |
|
Number of
Blades |
3 |
|
Diameter |
2.55m |
|
Rotational
Speed |
500rpm |
|
Power
Regulation |
Coning
type |
|
Orientation |
Downwind |
以下に風力発電装置,気象観測装置それぞれより得られた結果を示す.
Fig.2は月毎の風速の平均値をグラフに表したものである. 平均風速は冬季間に高く夏季間に低い典型的な津軽地方の気象を示している.冬季の平均風速は夏季の約2倍であり約3m/sである.平均風速の1日間の変動を調べた結果,冬季間は昼夜を通して風が強いが夏季間は昼に風が強く,夜は弱い傾向があることが分かった.

Fig.2 Mean Wind Velocity
Fig.3は風速の出現率と累積出現率についてのグラフである.ここでは特に冬季間(12月)のデータを平均化したものを示す.一般的に,出現率のピークが高い風速の位置にあり,風速の減少とともに出現率もなだらかに減少して,カットイン風速(2.5m/s)以下の出現率が少ない分布が理想的である.しかし金木地方の風況では,Fig.3のように4m/s付近にピークはあるものの,カットイン風速以下の出現率も高く理想的とは言い難い.

Fig.3 The Curve of the Situation of the Wind
Fig.4は風向の出現率を表したものである.この図も冬季間(12月)のデータを平均化したものである.図からわかるように,冬季間では風向の大部分は西および西北西寄りである.風力発電に用いられる水平軸風車のほとんどは方位制御方式を備えているため風向の均一性を問われることは少ないが,方位制御を頻繁に行うとブレードの回転数は上がらないため,発電効率を考える上で風向の安定性というのは非常に重要な要素となる.この観点からは金木地方の冬季間の風配は理想的であると言える.

Fig.4 Wind Direction Distribution
Fig.5は発電量を月別に表したものである.ただし発電量記録システムに故障があったため,10月,11月,12月以外の発電量は計算により求めた予想値である.発電量は風速の3乗にほぼ比例するため,Fig.2の平均風速のグラフより変化が激しい.平均風速の高い冬季間においても,平均すると定格600Wに対して約100Wの出力しかなく,有効な風力発電を行うためには何らかの工夫が必要である.

Fig.5 Output Power
Fig.6は風力発電装置から風下側に10m離れた地点で測定した騒音レベルと平均風速との関係を示したものである.騒音計は1.8mの高さにセットした.図より,風速の強弱により騒音レベルが大きく変化するわけではないことが分かる.また50dBが静かな事務所内程度の騒音レベルであることを考慮すると,通常の風速において騒音が問題になることは少ないであろう.

Fig.6 Noise Level
本研究では,金木町において,年間を通じた風況ならびに風力発電能力を調べてきた.その結果,冬季間は夏季間に比べて平均風速が高いが,それでも風力発電装置の能力をフルに発揮するには十分ではなく,有効な風力発電を行うためには,設置場所を選ぶ,風レンズなどの風の増速装置を設けるなどの工夫が必要であることが分かった.冬季間は風向が一定しているので,この特性を利用した増速装置などの検討を今後行う予定である.また,本研究で使用した程度の小型風力発電装置では,装置を設置したことにより騒音が問題となることは少ないであろう.
2002/09/02