月刊ホームページ

2002年2月

知能機械システム工学科

機械システム工学講座


今月の月刊ホームページでは、佐川研究室で行っている歩行分析に関する研究を紹介します。


加速度センサを利用した爪先軌道と歩行経路の3次元無拘束計測


1. 研究の目的

高齢者が転倒して骨折すると、そのまま寝たきりになる可能性があります。転倒の原因の一つとして、筋力低下によって爪先軌道が低下し、爪先が床面の障害物に衝突することが考えられます。従来、身体の動作計測のためには、実験室内での限られたスペースでビデオカメラによる画像解析が広く行われています。しかしこの方法は、実際に生活する家や屋外での広範囲な動作の計測には不向きです。そこでこの研究では、躓きの原因となる爪先軌道の変化と歩行経路を、いつでも、どこでも簡単に計測する方法を提案します。


2. 原理

  1. 爪先に加速度センサ、ジャイロ、地磁気センサで構成されるセンサシステム(図1)を取り付け、歩行時の を計測します。
  2. 爪先の3次元加速度を、固定座標系(地球)から見た3次元加速度に変換します。
  3. 加速度を2階積分して位置を求めます。
このような方法では、加速度センサの計測誤差などによって、積分した結果は発散してしまいます。そこで、足が地面についているときの、
を利用して、足が地面から離れているときに計測した加速度を修正します。このような方法によって、積分誤差を軽減することが可能になります。

3. 実験方法

提案した方法の有効性を確認するため、以下のような実験を行いました。

  1. 3次元動作解析システム(図2)を利用して爪先の実際の軌道を計測し、推定した爪先軌道と比較する(図3)
  2. 平地歩行、階段昇り、階段下りを行ったときの歩行経路を推定し、実際の到達位置と推定した位置と比較する。
    実験場所:

4. 実験結果

 図4は、2歩歩いたときのVICONで計測した爪先経路と、提案した方法で推定した爪先経路の比較です。両者はよく一致していることが確認できます。この場合、推定誤差の平均値は4[cm]以下となりました。
 図5は、グラウンドを東西南北にそれぞれ20[m]歩いたときの推定歩行経路です。実際の最終到達位置と推定した到達位置との差は5メートル以下となりました。
 図6は、理工学部1号館3階を一周したときの推定経路です。積分誤差を除去しないと推定経路はとんでもない方向に移動しますが、誤差を除去すると推定経路の精度は非常に高いものとなります。
 図7は、理工学部1号館の2階から3階へ階段を上ったときの推定経路です。始めに廊下を歩き、方向転換して階段を上り、踊り場で180度方向転換してさらに階段を上っている様子が分かります。
 図8は、理工学部1号館の3階から2階へ階段を下ったときの推定経路です。階段昇りよりもきれいではありませんが、推定経路から階段を下っている様子が分かります。


5. 結論

本研究では、体に取り付けたセンサから歩行時の爪先軌跡や移動経路を推定する方法を提案しました。積分誤差を上手に除去することにより、安価なセンサでも歩行経路を推定できることが分かりました。この研究成果は将来、

など、医療福祉分野への応用が期待されます。また、単に行動を計測するだけではなく、計測結果をインターネットなどで病院に転送し、医師の判断を患者にフィードバックする在宅ヘルスモニタリングシステムの構築を考えています(図9)。


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